沈黙 ―共和制の魂―

 母なる故郷はわが内に。人の基盤はこんなもんだろ。

 こいつをわが身に醸成するのは、他者に、既成の制度仕組み権威にわが身を委ねねえ強さ。沈黙だ。

 沈黙はなぜ大事か? 凝集力だからだ。自分への。

 余分なことは言わねえ。安易に乗らねえ。くだらねえもんは阿呆になって、ばかになってやり過ごす。

 濃密の沈黙。そこから生まれるもんだけがほんまもんの生命力。創造力だ。

 他者他人、その集合体の体制組織権威…。こいつに優るにゃ、優らねえまでも拮抗するにゃ理論口先じゃねえ、重量が大事なのだ。沈黙の。

 沈黙の密度。こいつが濃けりゃ濃いほど、感性、直観、エネルギー…、諸々はストレートに、真っ当に、強烈なパワーとなって湧き出る。肝心かなめの時に。

 理論も知なるもんも、こいつに裏付けられなきゃ偽物、エセだ。自分の故郷に根っこ持たねえものなんざ、どうせ空念仏、たわ言なのだ。真っ当な質量、密度あるもんとだけ関わること。

 何ものにも委ねえ、下駄預けねえ共和制の魂。政治論でも何んでもねえ。一人ひとりの人生、生き方のもんだ。共鳴共感、義理人情、人の並立はそっから生まれる。

 ぐうたらじゃ駄目さ。実践・体感・汗は必須。沈黙に、否応無え孤独に耐えるところの。烏合の「みんな」にちょろまかさねえところの。それが共和だ。共和制だ。


(付記)
 一人ひとりが沈黙に、重量に耐えられねえとなりゃ? 阿片、モルヒネファシズムに頼るしかもうねえだろう。