2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

言いたいことが多いほどに、書けなくなるものだ。 絵でも何でもそうだろう。技術的な事柄だってそうだろう。 昔から「ああ、この話(人)は豊かだ」。そう感じた途端に、仕事は遅れた。特に、書くという個人の作業は。 感じたものが自分の中で、ある摂理をな…

ヒトの原形、原像。 これは今においても国家の幻想と、上っ面の上昇意識の元を成す人工の明治―、その鋳型の網をすり抜ける、天然の魚だ。 人は元々、誰もが天然だ。天然こそが実存の根拠、造物主。 ヒトの原形、原像。これこそが直列型のピラミッドじゃない…

総てを生み出す源の、母なる海は自分の中にある。 これは、二十歳の頃に予感していた。 だが駄目だった。言葉が観念が見栄が体裁が、植え付けられた意識が邪魔した。自分の持続を。 出来合いの檻の中でばたつくだけの、烏合の一人に過ぎなかった。 沈黙に根…

書くことの意味や目的はいろいろだが、俺の場合はっきりしたのは、人の意識の基層に向けて、ということだ。 何で書くのかな…。 答えを言葉にしたら、こんなことだった。 基層に向けてとは、原形に向けてとイコールだ。心に向けてと言ってもいい。 こいつなら…

 安倍は保守じゃなかった

安倍は保守じゃなかった。 俺の感じでは、ほんまもんの戦後の保守は地べたの臭いがした。 地の子、街の子、泥んこの子。嗅覚と皮膚感覚でのし上がる、太え野郎ども。 土建屋宰相と言われた雪国の親父なんか、典型だった。 孫は、敬愛する祖父さん同様、人工…

 体感に素直に 

ものを作ったり書いたりするとき、何に拠るか。 振り返っても今もこれからも、体感に素直に―。これに尽きてると思う。 体感に素直に。それは、体感しながら作ること。 こいつは「ぜいたく」なもの作りだ。 まず第一にトロ臭くさくなる。否応なく。自分の集中…

振り向けば、悔し涙の味がする  二つの「仕事」 (その二) 更に力むきっかけは―

(初出 1/05/2007) 力みが原因で窮地に陥ることの多い私が、肩の力を更に抜けなくなったのは、十六年前のある出来事がきっかけだった。それは昔取った杵柄のままに、ローカル局の孫請け仕事をしていた時のことだった。 私は当時、ローカル番組の構成兼取材…

振り向けば、悔し涙の味がする  二つの「仕事」 (その一)

(初出 1/02/2007) 散文的なものを書こうと思ったら、こんなタイトルになった。そんなにナイーブでも、純真でもないのだが。気持ちはそんなところだったという程度に見てもらえればと思う。 仕事には、二つの種類がある。自分を振り返ってみて、そう思うし…

糞ったれ(初出 1/05/2007)

娑婆を回った。恒例の年初め。 大方は、やめちまったようだ。 この日ばかりは、用もないのに人の職場に、大手を振って顔を出せる。 今年はやばい。やばい臭いがプンプン。 いよいよ始まる、穀潰しの大量退職。処理の金をどうひねり出すか。 かまっちゃいられ…

作るしかない

(初出 12/31/2006) 人は、首から上は自由だ。 だが日々感じるべきは、首の下の自分なのだ。 土壇場で決定権を握るこいつは、実は何を気にして、何を怖れているのか。何に惹かれ、何に尻尾を振っているのか。 首の上は無意味ではない。知はヒントだ。 だが…

[日々雑感 熱気(初出 12/27/2006)

堆肥作りの親父に会った。歳は八十前とか。 牛の糞も、豆腐のかすも木片の山も、親父の夢の塊だ。 脈絡も無く延々と話す。多少の時間はかまうものか。思いを、あるだけぶちまけなよ。 大事なのは、誰ともかまわずぶつけてくる親父の熱気なのだ。

男と女 (三)

(初出 12/12/2006) 女はたいてい、かわいいものとして男の前に現れる。 男はたいてい、ほだされ結婚する。護ろうと。 やがて男は、女が数倍したたかで、生命力に満ちていることに気が付く。 それは大概の場合、女が母となってからだ。 それは多分、地上の…

過去からの葉書―「団塊」なる者達―

(初出 12/10/2006) かつて私がいた会社の同年の者から、挨拶状が来た。退職の挨拶だ。 「これからは、賃金のために働くことはせずに生きていこうと思います」と書いてあった。 葉書は一、二ヵ月、棚の上に置いたままだった。 ある日妻が「これ要らないよね…

人や社会を語るとは…

(初出 12/10/2006) 自分に刀を向けない思想は、思想に値しない。 人や社会を語るのは、自分の内に潜む同質のものにこだわるからというのは、分かりやすい自省だ。 人は、自分の中に潜まないものは気にしない。気づかないか、ああそういうものかと、ろくに…

仕事(初出 10/21/2006)

昔、地方出版社なるものと関わった頃。 編集者の肩書きを一応持つ者が私に、「原稿が遅い」と嫌味を言った。 後になって分かった。他の書き手は、言われたことをそのまま、まとめるのだ。 自分なりに飲み下して書く。このプロセスがなければ、それは早い。 …

さら地にする

(初出 10/17/2006) 自分をさら地にする。それが人生だったような気がする。 空しい気もするが、こんなもんだろうなという思いが大方だ。 それは一言で言えば、垢をそぎ落とす作業だった。いまだ未完成。カビの生えた意識はいまだ湧き出すことがあり、うか…

えせ職人(初出 8/12/2006)

関西にいた頃。当時言うパチカメ(スチール写真)の写真家をめざし東京で就職し直した助手の一人が、数ヶ月で舞い戻ってきた。挫折したと言うのだ。 「写真スタジオに何十人、雑魚寝させられてました。力のある者だけ残るというやり方で」。「力が無かったか…

職人列伝 (二) 細工職人

(初出 8/12/2006) 久しぶりに職人に会った。土地に伝わる細工の職人。 にこやかに話す男だった。仕事の姿をとカメラを向けると、作業に戻る男の顔が締まった。そうでなくちゃ。饒舌なのは、親父、祖父の時代とは違う。バランス崩さなきゃいいのだ。 長話の…

コンマ以下の嫌がらせ

(初出 8/12/2006) 田舎へ戻り食い詰めた時 初めて中継カメラの仕事をした 集団で 指示の通り動く仕事だ 地方局の下請け会社の者達は ある時 新参フリーターの私を 真冬のスキー場のてっぺんに配置した 冬の装備も何も 持ち合わせていなかった それはいじめ…

  助手達(初出 8/11/2006)

私が関西でカメラマンになった頃、助手達にはへんな奴がいた。曾我廼家五郎八のような、この頃ではミスターおくれのような、いつもぼーっと突っ立ってる男がいた。私と同年で、最初はまるで言うことを聞かなかった奴もいた。どちらもそれぞれ一家言あった。 …

あちら側へ行った人

(初出 8/11/2006) 世の中いつから変になったのか。 そんなもの昔から。 そうかも知れない。 でも流れの節目は やはりある。 それは多分1970年前後に始まり 80年代に顕在化したような。 周りの反対押し切って 思いを通したはずの兄嫁は言った。 「私達って …

「天国と地獄(HIGH&LOW)」

(初出 8/10/2006) 何年か前、子の引越しの手伝いで本物の「山の手」に行った。その界隈は一葉、漱石ら文人の住む街だったと聞いた。 収納が足りないというので、私は表通りにたん笥を買いに行った。見つけた小さな家具店の主は、客と親しげに話をしていた…

女が制度と癒着すると―

(初出 8/18/2006) 勇ましがりの二世、三世の政治家は、母や祖母の愚痴を聞いて育ったのだろう。「先代は、本当に尽くしたのよ。お国に…」。 この種の女達は往々、制度の価値観で生きている。でなければ、家庭が砂漠のようになる政治家の妻など務まらない。…

こちら側

(初出 8/16/2006) こちら側って分かるかい? 自分の体の中ってことだよ こちら側って感じるかい? 自分の体温だよ 他人に下駄をあずけない 他人の頭で考えない 意地張るってことじゃないんだぜ 感じる自分を確かめれば 人のこともきっと分かる 自分は何か …

知識と自分の間合い

(初出 08/16/2006) 理解するから変になる 解釈するから間違う 探求者じゃないセンセイ そんな者のコピーだからだ 「学校出たら 馬鹿になる」 ジョークでも 皮肉でもない 町工場の親父も 田舎の畑のばあさんも 感じてる 働くしかない 体当たりで 感じるしか…

論理は体で

(初出 8/15/2006) どんなにひどいことをした人間でも、時間が立てばたいてい「まあまあ」と言って近づいてくる。それは「上」の者のやり方だ。形を味方にする彼らは、人の感情は時とともに変わると高をくくっている。 体験は時と共に風化する。体験を言う…

自己愛の果て

(初出 8/15/2006) selfish misery は政治屋のおはこ 思い込みを信念に見せかけ 十把一からげで連れて行く あり得なかった古里へ 干からびた死人達の野へ たいてい家庭の欠落が 自己反省免責の 上げ底親父持ち上げるイエの仕組みが 坊ちゃん面の化け物を育…

 羊達とファシズム

権力は空白を侵す。 単純な力学だ。 人間がダイナモであることをやめれば、 出来合いのます目を埋めるだけの、干からびた存在に成り下がれば、 権力は平気で侵入する。仕事にも暮らしにも内面にも。 ファシズムは、手招きで呼び寄せられる。 暮らしの側は、…

  職人列伝(三) 仕事のできた人

(初出 8/25/2006) その人は、仕事のできる人だった。 東京でキャリアを積み、あちらの雑誌社の仕事を請ける彼女は初め、一人ですべてを賄わなければならない私の仕事を笑った。だが一、二度関わるうちに、飲みこんだようだった。以来、やり取りはスムーズ…

それで終わっちまうのか

(初出 8/25/2006) 世界一のインキ作るんだ(注) 言ってた男は 組合とかでけつまずいて 学生の虚を突く 批評家になった そりゃ それで良かった 虚を突かれなきゃ 白ぶたばかり でも それで終わっちまうのか なぜか そう思っちまう(注)吉本隆明はインク会…