私心を棄てる

 私心を棄てる。

 ちゃんとしたもの、まともなもの。これを作るにこれは必須だ。物質的なものだろうと精神的なものだろうと。

 こいつははっきり、断定して言える。永年の地べたを這った経験から。

 私心を棄てて大御心に帰依?

 これについても断定して言える。人は小さな嘘には敏感だが、大きな嘘に騙される。この典型と。

 私心を越えた彼方には、手垢に塗れたどんな構造物も無い。

 あるのは俺自身、あんた自身だ。無垢、無意識の。

 それは孤独でもあり、共鳴と連帯の源でもある。

 真っ当な汗。これを流した者にゃ分かる話だ。それ以上は言えねえ。

 人それぞれが、自分でつかむしかねえからだ。

 これほど平等なものもまた無い。