赤い血を感じる

 どうひっくり返しても俺は俺だと、深く深く深〜く感じる。こいつが人間だ。
 
 鏡のちんけな虚像じゃねえ。自分の体の赤い血を、深〜く自分で感じる。こいつが何より大事なのだ。

 昔俺は、何度も何度も空虚に出くわした。馬鹿げたことだった。ぐじぐじ思わず、寝りゃよかっただけなのだ。何んにも思わずうまいもん食って。

 さぼるのも休むのも、ぜ〜んぶ自分のためなのだ。自分感じる自分取り戻すために。どんな手ぇ使ったって構わねえのだ。そのためにゃ。

 切羽詰まった時ゃ仕方ねえけど、こういう場、何んとかかんとか作ってやるのがほんまもんの同志だ。

 そんな同志は先ずいねえ。だが子供ぐらいにゃ、そうしてやらねえと。

 自分感じる人間。感じられる人間。どうにかこうにか、こいつを育てる。手の届く範囲で人にできるのは、これぐらいだ。

 これに説教は要らねえ。自分感じる人生、ひたすら生きることだ。親の方が。