この国の知性は吉本隆明にゃ勝てなかった

 この国の知性は吉本隆明にゃ勝てねえなんて言うと、偉え崇拝の吉本教に見えちゃうだろね。

 こう言い換えりゃ分かり易い。本居宣長が言った漢心。近現代風にゃ輸入もんの洋学。この手の性根じゃ首から下、実生活にゃ太刀打ちできねえ。単純な事実、吉本は言っただけ。

 真っ当な生活者なら馬鹿でも分かること言う奴、言える奴居なかっただけの話。それだけ洗脳されてたってことさ。封建由来、明治由来のピラミッド、偏差値知性の幻想に。

 ついでに言や、宣長先生の大和心なるもんも同類。へんてこりんな憧れとくっついた古代由来の知の上昇志向。天皇主義と癒着したところのね。和歌だのなんだの芸術気取り、土着性臭わせたり、ちょっぴり手が込んでただけ。小林秀雄なんか、うめえこと取り入れてたけどね。東京もんのインテリはさすがしたたか、商売上手ってぐらいのもん。曲学阿世・統治迎合にゃ変わらねえ。

 へんてこりんなアタマ捨てて、上っ面の名前捨てて、真っ当に汗して働きゃ、嫌でも見抜けるちんけなからくり。東京下町職人系の感性が言わせただけ。吉本に。

 吉本も東京暮らしで頭がぼけて、半端なインテリで終わっちまったが、ピラミッドにあぐらかいて首の下持たねえ、この国の知の嘘っぱちをはっきり言ったのは、やっぱり吉本ぐらいだろ。あとは雪国の出の体当たり親父、安吾ぐらい。

 百姓工員、暮らしの世界。こん中で汗流す性根ありゃ(そんじょそこらの人生ってことさ)、洋物だろうが漢物だろうが、自分の言葉に翻訳し直して体に沁み込ますことだってできるさ。上昇の腐った性根捨てればね。