この国じゃ弱い奴が強くて、強い奴が弱い

 その心は、徒党組む奴にゃもってこい。この国の社会のフォーマットが。

 その昔、民間装う宦官組織(中央・地方の構造に蔓延の腐れ放送屋のことさ)のサラリーマン撮影屋だった頃。「さあ飯行こうぜ」。この手でやられた。

 さっさとお開き、仕事の場。一緒に飯食わねえ奴は孤立。孤立恐れて連帯求めず。

 ほんとに表してえもんは、飯なんか食わねえで必死でぶち当たらなきゃ出来っこねえ。時にゃ孤独に徹して。

 そんなこたぁ当たりめえのこんこんちきってのは、その後町工場の親父共見てよ〜く分かった。貧乏暮らしの三文ライターで。俺がヘンだったわけじゃ無えってことも。

 宦官仕様のこの娑婆じゃ、自由ってのは飢える自由。こいつ腹に据えてとっかかりゃ、そこそこ納得のもんは得られる。

 六十にしてはっきりと思う。腐れサラリーマン、さっさと辞めて良かった。三十年。血の入れ替えは一定程度できた。元手はかかった。貧乏暮らしと孤独の元手。自分なるもん手に入れるにゃ、安いもんさ。嫁さん子供にゃ悪いことしたけど。

 もの作りにゃ、孤独は嫌でも付きまとう。営業仕事も一緒だべってのは、食い詰めていっ時飛び込んだ世界で見た。へらへらお追従(しょう)じゃねえ、自前の仕方の営業屋。作る奴ってのは、どの世界にもいる。

 この国じゃ弱い奴が強くて、強い奴が弱い。

 自立の性根の西郷さんもこけた。作り話の神話の世界じゃ、日本武尊なんてのもいた。狎れあい、ゴマすり、もたれ合い。垂直・縦の御家の構造。こいつにはじき出されたつわもの。孤独と引き換えに稼いだ営業屋も、もう死んだ。

 何んにもしねえ奴が得する社会。正確にゃ、自分からは言わねえ、編み出さねえ、始めねえ。先例踏襲、言われたからやる、言われたからやってますの振りする。この手のやからが得する社会。ピラミッドの天辺の権威筋に言わせる、従う、イタコの口うつし社会。

 この手の構造ん中じゃ、嫌でもそうなる。弱い奴が強くて、強い奴が弱い。

 自立なんて言う奴ぁ、社会じゃ弱者さ。組まねえんだからね。徒党。

 「立ち上がれニッポン」。徒党の典型。こわもて面ほど一人じゃ何んにも出来ねえのは、ヤクザもその昔の軍隊も一緒。だから徒党組む。

 あっちにふらふら、こっちにふらふらの鳩の方が、よっぽどましさ。強さ、真っ当さじゃ。人としてのね。

 ぶち壊すべきは構造。垂直・縦社会、腐れ宦官サラリーマン支える狎れあいの淵源。


 六十年の元手賭けて言うぜ。

 共鳴共感、義理人情、人の並立、人民民主の共和制万歳。一人ひとりに根ざしたインターナショナリズム万歳。