『峠のほのぼのわが家』???

Oh, give me a home where the buffalo roam,
Where the deer and the antelope play,

Where seldom is heard a discouraging word,
And the skies are not cloudy all day.

Home,home on the range,


 英語の意味が多少分かるようになった頃。高校の頃だったか。

 どっかの高校が1955年頃(歌声運動の影響だろう)作った愛称歌集に、英語の『♪峠のわが家』が載っていた。これを見て俺はがく然とした。

 日本の歌詞と全然違うのだ。上辺の描写は一緒だが。

 違うと強く感じたのは、次の一節。

 「Where seldom is heard a discouraging word,
  And the skies are not cloudy all day.」


 こんな大事なニュアンスが何んで脱落するのか、懐古趣味程度の歌になぜ変わっちまうのか、俺は不思議だった。

 その後、色んな日本語訳の歌に接してみて、この種の「誤訳」は普通にあるのを知った。

 ほとばしる人の思い。この手のものは大概脱落する。

 その方が歌い(売れ)やすい、万人向け…。理由はいろいろあるんだろう。

 訳者(というより発行者達)への俺の率直な思い。馬鹿にすんじゃねえ。ニンゲン様を。

 話は飛躍するかも知れないが、この頃ちょんばれの八百長体質。相撲等々の。この手の訳者が翻訳すれば「和気あいあい」となるんだろう。

 「Where seldom is heard a discouraging word」。

 直訳でも、どんなに乗りの悪い訳語でもいい。この種の一節ははっきりと言うべきだ。

  この言葉の根にある人の思いは、何より大事と俺は思っている。

 それがあって初めて「the skies are not cloudy all day」となるのだ。

 ちなみに歌は正しく訳せば『峠のわが家』ではなく、『草原(牧場)のわが家』とか。元々カウボーイの歌とか。

 煙たなびく峠のほのぼのわが家に、こんな一節がなぜ…。こんなあほな疑問が氷解したのはつい先日のこと。嗚呼…。



 共鳴共感、義理人情、人の並立、人民民主の共和制万歳。一人ひとりに根を置くインターナショナリズム万歳。