愚か者のひとり言

 娘が具合が悪いというので、嫁さんが急いで出かけた。

 吐き気がしたとのことだが、たいしたことは無く快方に向かっているというメールが、嫁さんから来た。

 二歳半の孫娘が、母親を心配して背中をさすったとか。

 母親と二人暮らし。不安と甘えと優しさから、そうしたのだろう。

 孫娘の心根を思いつつ俺は、かつて同じ年頃だった娘にしたあまりに愚劣な行為を思い出している。

 昔、俺は苛立っていた時、孫娘と同じ気持ちだったであろう四歳の娘を叱り飛ばしたとがあった。娘の言ったことを誤解して。そんな思いを抱かせたこと自体、俺の落ち度だったにもかかわらず。

 今頃分かることだが、この歳頃の子供は親に叱られると、自分が悪いと思ってしまう。自分の気持ちは抑圧して。

 貧乏暮らしの俺は、そんなことは何も思わず苛立っていた。自分がかわいかっただけなのだ。



 こうして書いていたら嫁さんが戻ってきた。嫁さんに娘は「子供に心配させないようにしていた」と話したとか。

 娘が離婚し、子供を連れて近くへ戻って以来、時々思うことがある。子育ての機会をもう一度得たと。孫娘を通じて。俺の勝手な思いに過ぎないが。