逆立ち (二)

(初出 2/02/2007)

 テレビ番組の先生役の役者が、田舎町の教育講座に招かれて「教育」を話す。



 アイドル役者のガキ達に田舎暮らしをさせる娯楽番組のプロデューサーが、農家のせがれ相手に「農業」を語る。



 価値転倒が価値転倒にならない。現代の娑婆では、稼ぎは立派に成り立つ。



 田舎の農家のせがれの年収など、よくてせいぜい300万。親と一緒に朝から晩まで働いて、実質100万台なんてのもざらだろう。たった一時間程度で、君らの何ヶ月分かの汗水を稼ぐであろう男の話を、君らはを口を開けて聴くのか。



 政府の審議委員?



 奴らは、この種の者を一本釣り。



 顔を出せ。稼げ。宣伝しろ。俺達の政策を。



 広告塔は、からっぽ話のついでに、「産む機械」騒動に言い及ぶ。



 「今の世の中せせこましい。あんな話に目くじら立てる方が―」



 時代への、人間への根本の嗅覚を無くした、権力のみに鷹揚な豚。お前らの心がそんなに広ければ、走狗の下請け達も、少しはマシな嘘番組を作ったろうよ。(ついでに俺もその昔、もう少しはラクな暮らしができたはずだぜ)。



 豚も豚だが、口を開けて迎合するヒトもヒト。



 この構造と脳ミソが変わらん限り、豚の世は不滅だ。