二十年前、潜水艦が釣り船にぶつけ、三十人殺した。

 近くの町の若い娘が死んだのもあって、よく覚えてる。

 その時臭ったのは傲慢。奴らの。

 突っ切っちまえ。避けるだろうぜ。


 今度もまるで同じ臭い。

 巷見下ろすウデ組みの糞野郎共。


 司馬だったか。自分の経験とか何かに書いた。

 敗戦間近。避難するコクミン見て「轢き殺せ」。

 戦車隊長言ったとか。


 おクニのための対中戦。こいつ仕掛た関東軍「勇ましがり」はさっさとトンずら。置き去りのタミクサが、その後どんな憂き目に遭ったかは言わずもがな。「満蒙のタテ」せっせと送り出したクソ田舎に住みゃ、嫌でも見聞くさ。


 司馬だったか。「なんでこんな軍になったのか」。

 言っちゃ悪りいがカマトトせりふ。ハナっからそんなもんだろ。


 人殺しほど「理由」が、「大義」が欲しいもんだ。アタマ使わず済む大義が。悩まず済む大義が。上げ底のてめえ正統化する大義が。

 それが仕組みさ、このクニの。「万世一系」「不易」に裏打ちされた―。


 共和制になったって、同じこた起きるさ。アメリカ見ろ、宗家フランス見ろ。散々ひでえことやってきたさ。


 だがね。俺はこいつだけは無くしてえ。ペコペコ頭下げながら、腹ん中じゃ「俺達ゃ悪くねえ」。能面ヅラして騒ぎが過ぎるの待ちながら「民衆の糞共」。


 そう思う糞共の存在根拠。「靖国」ってば分かるだろ。


 檻からの解放。仕組みからの解放。馬鹿でも分かってるはずだぜ。63年前に。48年前に。40年前に。今も。

 なれ合い、八百長、カマトトやめりゃいいだけのもんだ。ほんのちょいと根性出して。