軍曹

 餓鬼の頃喜んで見たテレビを、先日見た。


 サンダースという軍曹が出てくるアメリカの戦争ドラマ。


 昔も、ドイツの兵隊があほみたいにバタバタ撃たれるのはヘンだヘンだと思いつつ、喜んで見た。特にサンダースが出る時ゃ。クニじゃ、ドラッグストアの店長とかの設定。


 途中から見たので詳しいことたぁ分からねえが、仲間裏切ってとんずらした兵隊が、サンダースに向かい言い訳たらたらの場面だった。


 「なあ、そうだろ? 仕方なかったんだ。それに誰もほかにゃ見ちゃいねえ。訴えたって無駄だぜ」。言い終わった途端、黙って聞いてた軍曹がそいつ殴り倒し、ドラマはお終い。


 放り込まれた状況を手下達とひたすら生きる口べた軍曹が、俺は無性に好きだった。そういう設定だってのが、見え見えの今も。



 その昔、確か1975、6年頃。モハメッド・アリと殴りあった白人野郎がいた。こいつはほんとのボクシング試合。


 殴っちゃ引いてまた殴る。試合はまるでアリのペース。


 この白人野郎、殴られても殴られても向かってった。憎悪むき出しの(と俺にゃ見えた)ものすげえ形相で。


 血だらけ。終いは確か、白人ボクサーのTKO負け。


 俺はなぜか、この白人野郎が気に入った。ていうか、びびりながら見た。


 餓鬼同士の仁義・度胸の延長。そういう匂いの世界は好きだ。地べたの仕事の根っこも、結局はそんなもんだった。


この手の仁義が小馬鹿にされねえ社会ってのは大事だ。この手の仁義が体よく利用されねえ社会ってのは大事だ。腕組み野郎達のピラミッドの中じゃ無理ってのは、骨身に沁みた。