絞り出すしかねえ

 以前、タレント知事が登場した時。周りに集まった者達は、計算高い商人か頭で動くインテリばかりだった。

 この手の者達は、観念と上昇志向で人仕分けした。俺のような者とは、当然お近付きにゃならんかった。

 それでも毎度投票した。鼻つまんで。旦那衆にゃ入れる気ゃねえので。同じ気持ちの田舎もん、ずい分多かったろ。

 追体験したようなもんだった。敗戦後躍り出た、戦後民主の知識人。

 ばか臭せえなぁ…。つぶやく俺に、この手にゃ普段、無縁の嫁さんは言った。そんなもんよ、過渡期って。いろんな人いる。

 過渡期の先に何あるんか。はっきり一つ言えるのは、頭じゃ時代は作れねえ。首から下、それなりに持ち合わせた方が結局は居残る。どんなにくだらねえもんでも。生身のヒトが生きてるのだ。時代と社会にゃ。

 明治も戦後も、結局永らく旦那衆の世に。

 あんたやっぱり正しかったなんて死んでも言わねえためにゃ、絞り出すしかねえ、体ん中から。