父親
俺にゃ父親はいなかった。
いたのは、娑婆との癒着を省みねえ人物だった。どこもそんなもんだろう。
死ぬ少し前にゃ、嫁さん子供と時折やって来る不肖の三男をちっとは分かったらしかった。家を継いだのはええとこ取り、つまみ食い人生、親に輪ぁかけた愚物。時代は退歩した。わが家系においちゃ。
父親ってのは大事だ。餓鬼の時も、親になってからも、歳食ってからも思う。
黙って見つめ、見捨てること無く、背中で伝える。何度も言うがこれが父親。トータルな世界を、自前の魂を持つ男。
俺? 半端野郎さ。これは、死ぬまで変わらねえ俺の実践課題。自分の中のくだらねえもんの解体とイコールだからだ。
女が、嫁さんが、子供がどうこう以前の男の実践課題。そう俺は思ってる。