もっと深く絶望せよ

 もっと深く絶望せよ。

 これを吉本隆明が言ったのは1959年。

 絶望が浅かったから吉本は上昇したと俺は思っている。

 吉本は、自分の本が古典(いつまでも読み継がれるもの)になるのを望んでいた。なると思ってたんじゃねえかな。

 どうやらそうはならねえなと吉本自身感じたのは、70年代中〜後半だろう。

 「歳とりゃ楽になると思ってたが、きつくなった」。そう言ったのは、案外この辺の意味合いだろう。

 売れなくなったということ。時代(の中の一部の者達)との無邪気な共生は終わった。子育て等々、金かかる時期に。

 吉本が大衆の原像の表現者に徹っする方向をとったなら、なったろう。古典に。吉本と家族を食わせるほどの売れ行きになったかは知らねえが。

 80年代半ばに死んだある人物が、あなた詩を書きなさいよと吉本に言ったのは、この辺の意味も込めてだろう。ニコヨンしたってそうするべきだった。活字で食おうなんて性根棄てて。

 もっと深く絶望せよ。そう。その通り。いつでも、どんな時でも。