奇麗事の白豚

 マスゴミ。奇麗事の白豚。

 先日、間もなく定年退職という男が三十年振りに電話してきた。横柄に。

 年休使って何ヶ月か遊ぶそうな。

 あんたも三十年前そうしたろうと言うので、事実を言った。形は自己都合の退職。穴のあく職場の者達への仁義と思い、終わりの一日まで働いたと。

 腹の中は分かった。寂しいのだ。

 同情? 寂しさを手前勝手な観念で埋め合わせてきた者に?

 同じ釜の飯食ったのはほんのいっ時、その後の人生永かったと言って終わりにした。

 二十余年前、労組関係の年史作成の時。聞き書き調査を手伝ってくれた爺さんは言った。「労組幹部の晩年は寂しい。辞めりゃ誰も寄って来ねえ」。

 その意味は俺にはよく分かった。とりわけ当時の親方日の丸労組。「働く者」の印籠かかげ、反権威の名の権威、頭で人を切り捨て、がらんどうの仕組みに寝そべり続けた者達。ほんとに汗流す者、どぶ板踏む者は小馬鹿にし続けた者達。世を覆う科挙学歴、奇麗事の市民社会と同根。

 一朝一夕で世の中良くなる訳はない。この種の者達が消え失せ、別の新芽が育つまで。保身の者達が新芽を散々摘み取った後に。



 共鳴共感、義理人情、人の並立、人民民主の共和制万歳。一人ひとりに根を置くインターナショナリズム万歳。