人ひとりの地べた

 食い扶持を、仕事を探しさまよう。独りで。

 これが俺の立脚点、地べただ。

 何度衝突し、放り出されたことか。そのたび毎度仕事探し。自営、自由に失業手当なんざあるわきゃない。観念・上部構造は失せ、野良猫がそこにいるだけ。

 その時の景色。社会・政治を舌鋒鋭く批判する者も、正義を唱える者も、あわれみ深い者も、事情も聞かずに遠ざかる。遠ざかるばかりか、ほくそ笑む。人ひとり潰れるのを。

 先日も、電話の先で失望の溜息を聞いた。あんたまだ生きてたのか…。人への希望的観測を棄てれば、このぐらい馬鹿でも嗅ぎ取る。短い会話の内に。

 これが俺の立脚点、地べただ。独りということ。俺を生かすも殺すも俺次第。

 ここまで来ると、よく分かることがある。

 恨みのたぐいは無しになる。生きるのは自分だからね。

 人は産み出すから寄って来る。俺が、あんたが。

 腹に据えること。これを。