敗北の構造と民衆

 民衆の敗北の構造は、共同幻想に絡め取られた意識構造にあると若き吉本隆明は見抜いた。

 彼が優れていたのは、そうなってしまう民衆の魂に、軍国主義に絡め取られた自身の体験も踏まえて、批判の客観的論理とは別の方面から染み入ろうとした所にある。

 吉本隆明はこの作業を結局は中断したと感じている。

 本が売れなくなった時代(1980年前後)に友人が彼に言った言葉。

 「あなた、詩を書きなさいよ」。

 これは実に的を得ていたと感じる。

 下町のあんちゃん時代の初心に戻ってテーマを振り返り、掘り下げるために。