(1) 本性と観念(再録)
本性は自分で探り当てるものだが、観念はお仕着せだ。
こいつは、はっきりしてる。
本性を他人に教えてもらったら、そいつは観念だ。
経験など、何かをヒントに直覚するしかないのが本性だ。
俺が知識は無駄じゃないというのは、こいつと絡む。
理論や知識という奴は、どんなにまともなものでも、それ自体セミの抜け殻だ。他人というセミの―。
そいつを丸呑みしちまったら、自分の人生は模写に過ぎなくなる。
理想形。こいつに根ざした減点法しか無くなる。
知はヒント。どう間違ってもそこまでだというのも、ここにある。
ヒントや直覚は、自分に根ざした他の認識だ。自分を軸に他を取り込める。他を媒介に自分に気付ける。自分の流れは、実存は失わな
い。
センセイなんか持っちゃ駄目なのだ。必要だとすりゃ参考書。せいぜいここまでだ。テキスト本体は、自分自身なのだ。
学ぶんじゃねえ。盗め。職人の言う本質は、ここにある。自分に取り込むのだ。
「他人」に合わせて自分を決めるのほど、馬鹿ではた迷惑なものはねえ。
可笑しきゃ自分の心で笑え。自分の気持ちで怒れ。自前の思いで泣け。こいつは結構むずかしいのだ。