(2)流行語の効用(初出 07/16/2007)(一部改訂)
昔俺が学生の頃、自己否定という言葉が流行った。
それは流行語だった。今となりゃ、言った奴も覚えちゃいねえだろう。
俺は真面目に考えた。その通りと。
自分をがんじがらめに絡めとる枠組みの否定。その種の幻想の否定。
こいつは俺にはしっくりだった。
流行語は面白い。流行歌も同じだ。
歌ってる奴が空っぽでも、それはそれ。
がらんどうの空間に思いを込めるのは、聴く側なのだ。
その通り。異議はなし。
そのまま何十年も経っちまった。
嫁さんご免なさい。上の子ご免なさい。先月逝った義理の母ちゃんご免なさい。俺が貧乏こいた時、鼻で笑ったほんまもんの母ちゃんの方は、まあいいわな…。
上の子に庇護されてた下の子は、俺だって苦労したって言うだろう。
おめえは俺より、正真正銘真っ当だ。でもつい笑っちまう。
俺がどこかで落としちまったものを、元々素直に持ってる。多分そのせいだ。
上の子のは、壊しちまった。