体感に素直に 


 ものを作ったり書いたりするとき、何に拠るか。

 振り返っても今もこれからも、体感に素直に―。これに尽きてると思う。


 体感に素直に。それは、体感しながら作ること。

 こいつは「ぜいたく」なもの作りだ。

 まず第一にトロ臭くさくなる。否応なく。自分の集中力、凝集力を高めながらの作業になるので。体感を確かめならがの作業になるので。

 「おら、どうにも胸に落ちねえ…」

 幹部が仕切るしゃんしゃん大会で、唐突に言って場をかき混ぜる鈍ガメ。こいつと同じことを、自分の中でやる。それが体感の作業だ。

 二束三文の仕事じゃ、間違いなく食い詰める。母ちゃんとけんかになる。

 それでも腹決めてやるしかない。どうにかこうにか生き延びる手立てを、自分なりに編み出しながら。

 大方、それでやってきたと思う。人生で諸々出くわした事柄も、思えばその中の出来事だった。「おら、どうにも胸に落ちねえ…」


 妻に子達に自分に、後ろめたくないものを。

 これも当然こいつがベースだ。

 暮らしとの衝突の原因なのに? そう、どんなに矛盾があるかに見えても。

 何をやっても、しんどさはある。はっきり言えるのは、こいつは奴隷労働のしんどさじゃないことだ。