今と変らぬ貧乏暮らしで、子育てに追いまくられてた頃。

公営のボロ住宅の戸を叩く奴がいた。

 国営放送の集金人だ。「金払って下さい」


 六十過ぎぐらいのじじいだった。どっかを退職して、雇われたんだろう。


 上がりこんだじじいに俺は言った。「あんたらの何分の一、何十分の一の制作費と賃金で、同じか上の仕事してる奴からも、金巻き上げるんかい」。自負でもはったりでもねえ。事実だから言った。「人様からそんなに金吸い上げたきゃ、テレビに出てるちんころ姉ちゃん、兄ちゃんに、研修兼ねてやらせたらどうだい」。


 今でも俺はそう思ってる。今だってやってるから言うのだ。面と向かって人から金を取るのが、どれだけ大変か。高だが数千円の金集めるにも。


 時には延々数時間、散々愚痴を聞かされりゃ、てめえが一体なんぼのもんか位、馬鹿でも気が付くだろう。