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村下孝蔵ってのは、どこの田舎にもいるいもねえちゃんが喜んで聴く歌だ。
てえことは俺も、俺の中に残る―てよりも隠してた、いもにいちゃんの感覚で聴いてるってことだ。
素直ってのは大事だ。人ってのは誰だって、どこにもある景色の中から浮かび上がってくる。歳と共にそれぞれの顔と個性を備えて。
言葉や意識はへたをすると、このプロセスを歪めちまうことがある。
仕事や芸術、発見の力などは、歪みの中からむしろ生まれるって話がある。そういうこともあるだろなと思う。
でも今は、こういう話に組みする気にゃならねえ。結果で肯定していい話じゃねえ気がする。歪みに否応なく落ち込んだ者を、非難出来ねえが。
言葉や意識。気持ちがそこに拠ると、人は無個性の景色を怖れるようになる。嘲笑、軽蔑などの姿勢をとりつつ。この心理のメカニズムは、俺自身よく分かる。これは有害だ。
無個性の景色。こいつは無意識と言ってもいいんだろう。何かに切り裂かれてねえ母なる海。こいつにゃ委ねるしかねえ。一つのことを心に置いて。こいつの支配者面する者は、すべて嘘っぱちだと。