政治って奴は誰がやっても、個々の喜び悲しみなんざ救い切れねえ、十把一からげの大なただ。

 何やってもどっかで線引き、ぶった切るしかねえ。


 例えば医療費。年寄り増えて医療費かさむのは、当たりめえだ。いってえ誰が面倒見る。現役世代がアカの他人の親孝行? そうさ。そいつがこのクニの仕組みさ。


 人口の逆ピラミッド。こんなもん、数十年前にゃ予測できたはず。俺のガキの頃だって「日本は今、後進国の富士山型。あんた方大きくなる頃にゃつぼ型になりますよ」と言われ、ふ〜んそんなもんかと口開けて聞いてた。


 前も言ったが、初めて聞いてビビッたのは、年金払いのこの仕組みだ。後の世代が前の世代の面倒見る。初めて知ったのは不覚にも、四十代になる頃か。ふざけるな、どこのワルがこんな仕組み考げえやがった。予測好き、アタマでっかちの役人共が知らなかったわきゃねえ。


 保険の仕組みのボロ白日の下にならぬ頃、貧乏人のわが家にもせっせと来た国保徴税吏。そいつに俺は言ってやった。あんたら俺が歳食った時、もらえねえの分かってんだろ? 四十過ぎのおばちゃんだったか。困った顔で笑って答えなかった。答えられなかったんだろ。


 俺も嫁さんもせっせと払った。まだ生きてた親の分と、理屈にならねえ理屈でてめえなだめて。取りに来たのは子の分だ。そんとき子供は大学。子なりに借金(奨学金)・バイトで食いつなぎ、それでも親は学費に手一杯。到底払えねえと何度言っても、玄関ドアまで勝手に開けて、何度も来た。仕事で疲れ畳にぶっ倒れてた時、かってに入って薄笑い。人生のイロハも感じねえで歳だけ食った、役所かどっか定年の徴税爺いのクソ顔。死んでも忘れねえ。


 糞社会の建前、制度変革する。ぶった切る。どっかで線引きし、一気にやったらどうだい。後期高齢者医療制度でいいんだよ。もっと徹底してやったらいいんさ。ヘンな精神・建前の下、後の世代におんぶにだっこ。こんなもんさっさと止めて、コイズミ好みの自己責任。こいつ徹底すりゃいい話。


 もう一度言う。政治って奴は誰がやっても、個々の喜び悲しみなんざ救い切れねえ、十把一からげの大なただ。なら一つだけ、不可欠なものがある。ヒトに根ざした、真っ当なヒトの人生に根を置いた基本的部分の公正、機会均等ってやつ。誰がが勝手に得する。自分の力、実力以外の所で。仕組みとしてのこいつは絶対排除しなきゃ、まともな社会も変革も、まじめに生きる者の希望も、老いの真っ当な諦念も、絶対生まれて来ねえ。


 運の良し悪しは仕方ねえ。リスク覚悟の株、ばくちもいいさ。だが絶対許せねえのは、勝手な仕組みの古今伝授、汗と無縁の相続、差別、乗っかり・搾取の仕組みと人生だ。


 百%公正なんてもんは、あり得ねえ。保険なんて奴は永遠にモラルリスク付きまとう、ずるシャモ共の得する仕組み。馬鹿正直、長いものにゃ巻かれろ、忠実素直な輩の多いこの地方が、国営放送の集金屋や、あらゆる種類の保険屋にゃ多分天国ってのは、ほんと涙出るぜ。(損得に徹した大阪が、保険屋にゃ地獄って話聞いたことあるが、今も多分一緒だろう。永年の補助金ズレ、くれるものにゃ知恵回る北海道なんかも、そうじゃねえかな)。


 それでも俺は公正を言う。土台の公正。仕組みの公正。基本的な部分の公正。現実にゃ、六、七割の公正でいいさ。モラルリスク、ずるシャモ共の余地あったって。


 だから自己責任。こいつ言うなら共和制だよ。片方で頭垂れろ。権威・財産・既得権の古今伝授。片方でお前の責任。こいつは絶対成り立たねえ。何度でも繰り返して言うぜ。(「自己責任」言う今の時代が、こいつと逆に動いてるのはよく分かる。二世三世ボンクラは、「自己責任」にこと寄せて人にゃ責任押し付け、古今伝授にゃ尻尾振り。コイズミがそうだろ。ボンクラ誤魔化す仕組みと光背にすがる。江戸の昔と変わらねえさ。)


 真の博愛。こいつは仕組みの自由と平等の上に。古今東西、暮らしの感性の常識なのだ。フランス気取りに言われんでも。


 この大枠、この精神、この仕組みとセットなら、保険は自己責任。爺い共、てめえの面倒てめえで見ろの時代になっても、一向構わねえ。


 各論として、どこで制度をぶったぎるか。一番いいのは、「団塊」よりも十数年ほど上ぐらいじゃねえかなが、俺の勘と経験だ。この辺の世代は、けっこう溜め込んだまま棺桶に足突っ込める世代だろう。十把一からげの話だが。


 「団塊」あたりまでは、あるいはもう何年か下ぐらいまでは、溜め込みの世代じゃねえかな。貯金取り崩して払わせりゃいいんだよ。エセ親孝行の制度ぶった切って。自己責任とやらに切り換えて。ただし仕組みの公正とセットで。


 こうすりゃ下の世代は、まだ生まれねえ世代は救われるだろう。シャンとしねえ奴も、叱り飛ばせるだろう。お互いずるシャモやめるんだからね。


  政治って奴は誰がやっても、個々の喜び悲しみなんざ救い切れねえ、十把一からげの大なただ。


 共和の制度になり、自己責任とやら真っ当にやったら、俺も嫁さんも真っ先泣き見るだろう。払ったゼニは帰らねえ。食いつなぐ蓄えもねえ。変革期のヒトの心は氷か鬼。


 それでも構わねえさ。仕組みの公正とセットなら。本望って奴だ。「自分」の否定、エセのてめえ否定人生の。


 共和制。なってもならなくても、俺がやらにゃならねえこと。それは必死こいて働くことさ。俺のため、嫁さんのため。子供達の幸せのため。制度の払いなんざアテにしねえで。ぴんぴんコロリ信条で。山ん中の爺婆にゃけっこういる。雪国にも結構いる。人なんかアテにしてねえさ。ハナから。


 腹決まってるぜ。真っ当な変革のためにゃ。