三人の共通点。そいつは勤労の、労働の匂いするってとこだろ。匂いだけってとこあるが。ほんとに働きもんだった奴、そうじゃねえ奴はいるが。


 汗の匂い。労働者の匂い。場末じゃねえ下町の匂い。下町の匂いってのはマルクスからしなかった。職人労働者の感性って点じゃ、一緒な気がする。


 気の利いた歌詞作ったディランなんかとの違いは、この匂いの有無ってとこだろ。


 このクニのフォーク歌手で、この匂いのする奴誰だろか? たとえば中島みゆき。絶対違うな。気の利いた歌詞作ってたが。歌詞にちょろまかされるのがインテリだ。吉本も好きだったろ。中島が。


 マルクスも吉本も、労働の、労働者の予感は持ってたが、インテリ側にやっぱり走っちまった。でなけりゃ実存と十把一からげの間で、もっと身もだえしたろ。吉本も、庶民が上昇しちまったなんてボケたこと言わなかったろ。麻原持ち上げなかったろ。


 “裸一貫汗修行”(努力のフリ)の麻原持ち上げたのは、自分の空虚、それへの意識無意識の後ろめたさじゃなかったんかい。あこがれ・生まじめの信者と一緒で。


 人尊敬するってのはよくねえぜ。自分の空虚自分で埋めろい。そういう話じゃなかったけ?


 上げ底成金社会のアンチテーゼで終わっちまったのは、情けねえなとやっぱり思う。学生のいい兄貴分ってのは、学生ふぜいとしかつるめなかったってとこは、どうしてもある。あんまり言いたかねえけど。どうでも良かったはずなのだ。肝心なかめの人生の入口で眠りこけた奴らが、本買わなくなったって。


 ヒントくれた。この点は感謝さ。素直に。そっから先はあんた方ってよりも、一人ひとりの、自分自身の、俺自身の問題だった。だから絡む気はねえ。絡む理由もねえ。残念だったと正直思うが。