仕事(初出 10/21/2006)


  昔、地方出版社なるものと関わった頃。



 編集者の肩書きを一応持つ者が私に、「原稿が遅い」と嫌味を言った。



 後になって分かった。他の書き手は、言われたことをそのまま、まとめるのだ。

 自分なりに飲み下して書く。このプロセスがなければ、それは早い。



 一つ彼らが正しかったのは、賃金は彼らのペースに合わせて設定されていた。書き飛ばさないと、食い詰める。それでなくても安いのだ。



 要領の問題? 若い頃に、その手の要領が先行すると、確実に馬鹿で終わる。作る世界を知らないまま、歳を食う。



 結局、自分のやり方でやるのが一番なのだ。通らなければ淘汰される。それも前進。半端な関わりは一番の害悪。



 自分の視野を持たない者、持とうとしない者。彼ら彼女らとの関わりは人生の無駄ということも、骨身にしみた。