過去からの葉書―「団塊」なる者達―
(初出 12/10/2006)
かつて私がいた会社の同年の者から、挨拶状が来た。退職の挨拶だ。
「これからは、賃金のために働くことはせずに生きていこうと思います」と書いてあった。
葉書は一、二ヵ月、棚の上に置いたままだった。
ある日妻が「これ要らないよね…」。そう言って、こまかくちぎって屑かごに捨てた。
温和な妻の行為。
嫉妬でもない。憎悪でもない。接点が無いのだ。
妻には言わなかったが、彼に返事は出していた。
我々はやり残したことが多すぎる。これからもがんばってやって行こう―、そんな意味のことを書いて。
やはりというか、音沙汰は無かった。
四半世紀前に分かっていた。でなければ去らない。
賃金のため、暮らしのため。今後も変わらず働くのは、選んだ人生の余禄なのだ。