「子供」の世界

   (初出 11/25/2006)


 もう十何年前のことだが、ある変人に出くわしたことがある。彼は自分がこれから作る会社に私を誘い、返事もしないうちに断ってきた。別に、私について負の情報などを仕入れたわけでもなさそうだった。



 しばらく関わる中で分かったのは、彼はまるでおもちゃをもて遊ぶように、頭に描いた事柄をいじり回しているらしいことだった。その後私は、その性格に由来する実害を被ることになり、付き合いは止めた。



 それは一口に言って、人との関わりの希薄さが生んだ気質だったと感じている。兄弟の少なさ、友の少なさ、育った家庭自体の人との関わりの薄さ。それに拍車をかける、親達の権威体質。そこでは、多様なものを感じ取る気質や姿勢はまず育たない。医者の子、先生の子、警察官の子。彼らが往々、子供の世界の本音の部分で敬遠され勝ちだったのも、この辺にあったのだろうと思う。この頃ではエリート層のサラリーマンの子にも、この種の臭いを撒き散らすものがいるように思う。



 関わりの薄さによるものは、その後の人生で修正もできる。だが自己中心の権威の巣食った精神には、意識や思いを更新する新たな経験自体、望むのは難しい。二世三世の政治家達。彼らを危惧するのは、この点にある。見落としてはならないのは、彼らは今の社会を反映して登場し、行動しているということだ。