この世は物欲の餓鬼草紙。こいつの一大原因は、自己保存に徹して執着の女のせい。


六十年近けえ人生じゃ、例外の女一人もいねえ。この頃じゃ、知性(口先)の化けの皮一般化なので、本性一見見えにくいってだけ。嗅いでみりゃ分かるよ。


 女の執着・自己保存。こいつは善悪の彼岸


 そんじゃ、この世は救いはねえ? そんなこたねえさ。毎度おなじみリフレイン。男が男ならばね。


 身捨てて浮かぶ瀬ありって、分かるかい? 俺、結構これで救われたよ。土壇場じゃ。偉そに言える話じゃねえけどね。いい歳こいて、貧乏人のまんまの俺様が。


 どんな時身捨てたかって? どんな時浮かんだかって? いろいろあったさ。嫁さん選ぶ時。もの作る時。上っ面の正義にどやされた時、追っかけられた時。「みんな」語る奴等に囲まれた時。詐欺に危うく引っかかりそうな時。すけべ根性欲望あるから、土壇場に出くわしちまうんだけどね。


 ぽんと自分突き放しちまうんだね。そんな時ゃ。すっと見えてくるよ。全体が。執着ってのは、部分だからね。部分ばかりに、目行っちまうってこったからね。


 こいつは男の特技。女にゃ無理。無理だから女。善悪の彼岸


 男同士の話ってこいつだよ。ぽんと自分突き放す者同士。たま〜にいるけどね。そんな匂いの奴。


 この世は物欲の餓鬼草紙。も一つ原因が、こいつ忘れた金玉梨男さ。実物の幻想のかあちゃんの陰に隠れて、表に出れねえ。腹決めれねえ。腹割った話できねえ。老いも若きも。


 世の中にゃ「おめえ男だろ」でたぶらかす、男面の詐欺師わんさといるから要注意だけどね。昔の帝国軍人さん。こいつの係累末裔。乗っかってしゃべってるかどうか嗅ぎ分けりゃ、大丈夫だけどね。身捨てて。


 女の自己保存馬鹿にしちゃいけねえよ。だからニンゲン続いてる。男と女は両輪さ。なんだかんだ言っても。