田舎者と田舎

コンマ以下の嫌がらせ

(初出 8/12/2006) 田舎へ戻り食い詰めた時 初めて中継カメラの仕事をした 集団で 指示の通り動く仕事だ 地方局の下請け会社の者達は ある時 新参フリーターの私を 真冬のスキー場のてっぺんに配置した 冬の装備も何も 持ち合わせていなかった それはいじめ…

 日陰者達(初出 10/02/2006)

ある人物の歩みを掘り返していた時、偶然大逆事件の関係者にぶつかった。弟は刑死し、兄の彼は秋水らの分も含めてだろう、裁判費用の全額を負担して、不遇のうちに死んだという。 この事件がどこまで事実で、どこまででっち上げだったかは知らない。だが秋水…

二つの土地 (初出 2/28/2007)

この地方には、二つの土地が。 いわゆる歴史・文化的。風光、知性と映る地と、 豪雪・過疎で、来た嫁さんが一冬で逃げ出すという嘆きの地と。 都会のサラリーマンへの定年帰農のアンケートは、やはり前者が一番人気とか。 舞い戻って四半世紀超の実感は、対…

芽の出ぬ土地 (初出 2/27/2007)

「ここは種蒔いても芽の出ぬ土地」。その昔、親鸞さんがそう言って通り過ぎたそうだ。 多分神話。自嘲が生んだ話だろう。 俺の住む土地だ。 「上」の話を鵜呑みにする、鵜呑みにした振りで、すべて済ます。無意識にじゃなく、差別する。 そのこころは、頭で…

ある作家の記憶 (初出 07/26/2006)

郷里に戻った頃の記憶の一つに、その頃たまたま出会ったある人物の思い出がある。作家を生業とする彼は、故郷でもあるこの地の、ある町外れに住んでいた。私が、関わっていた冊子の取材で彼の家を訪れたのは、戻った年の初冬の頃だった。 用件は、その頃彼が…

(4)母さんの歌(初出 08/03/2007)

母さんが夜なべをして 手袋編んでくれた 木枯らし吹いちゃ 冷たかろうと… この歌は、昔の歌声運動とかの中から生まれた歌だ。 どこかロシア民謡風なのも、そのせいだろう。 作ったのは、左翼運動に身を投じた青年とか。 戦時下の疎開の記憶をもとに、自分の…